「こだわり」と「成功確率」の狭間で苦悩する

バンドマンであれ起業家であれ、はたまたお笑い芸人であれ、

「こだわり」と「成功確率」の狭間で苦悩する人が多いのではないだろうか。

 

このようなクリエイター(0から1を産み出す者)で、

「こだわり」を大事とし、 成功確率を二の次と考える生き方は、成功するまでは「エゴイスト」「頑固」「自己陶酔」 あるいは「ニーズ無視」と批判される。

逆に、成功すると「信念がある」「天才肌」ともてはやされる。 本当の天才なら、恐らくその狭間のことなんて見向きもせず、 黙々と自分のやりたいこと、実現したいことに没入し、気がついたら大成功を収めているだろう。

だけどぼくも含め、世の中のクリエイターの大半は凡人であり、自分の「こだわり」と「成功確率」 の狭間で苦しむことが多いのではないだろうか。

 

具体例を挙げてみよう。例えばバンドマン。 バンドマンで成功するのは、大きく分けて以下の2タイプではないかと思う。

1つは、自分の好みの曲やホントにつくりたい曲じゃなくても世の中の音楽ニーズに合わせて曲を作ることで、着実に成り上がるタイプ。

もう1つは、自分の「こだわり」を最後までぶらすことなく、日の目を浴びるまで 黙々と地道な路上ライブを続け、最終的には「独創性」が認められ爆発的な人気を 獲得するタイプ。

 

これは起業家でも同じことが言える。

 

1つはマーケットの顕在ニーズに対して確実にフィットする事業を押し進めるタイプで、 もう1つは潜在ニーズの仮説を立て、新しいライフスタイル受容を喚起・提案するタイプ。

恐らくExitの打率が高いのは前者だが、顕在ニーズなだけあってそれは「既に可視化」 されており、当然大企業等も虎視眈々と狙ってるしプレイヤーも多い。

こういったマーケットで勝つためにはパワープレイに強い経営陣を揃えるか、 既存サービスとは違う鋭い差別化要素を武器に、既存マーケットをエグるように参入し、 大企業がまだ参入に手こずってる間に最速でユーザー獲得して大企業に売り抜けるのが ベストシナリオだろう。

 

一方で後者の需要喚起タイプの潜在マーケットを掘り起こす場合は、 言ってしまえば「膨大なニーズがあるかどうかは分からんけど、絶対オモロイと 思うし流行らそうぜ」というパッションの元に、濃霧がかかったブルーオーシャン(笑)の中で、 いつ辿り着けるか全く確証の無い黄金の国ジパングを探すかの如く難易度の高い アドベンチャーゲームをやってるようなものである。

こういったタイプは、「流行らせる」プロデュース力と、 ニッチからマスにスケールさせる為のスケール戦略を描ける経営陣を擁してるかどうか、 そしてその経営陣が流行るまで臥薪嘗胆出来るかどうかが、勝負の分かれ目になるのではないだろうか。

完全に個人的な主観だが、後者タイプできちんとニッチからマスにスケールされた国内成功例として、以下のサービス(一部タレント)があると思う。

 

「会いに行けるアイドル」のAKB48

「匿名でコメントを動画に実況感覚で流せる動画投稿サービス」のニコニコ動画

「ファッションコーディネイトCGM」のiQon

スマホで生放送」のツイキャス 等がある。

 

 

そこそこユーザーは伸びてるが、低空飛行。いつ跳ね上がるか(そもそも跳ね上がるかも) 分からない不安に苛まれ、それでもビジョンの実現を信じてがむしゃらにやるべきか、それとも 早く見切りをつけて事業撤退すべきか。

同じ事をやってる会社が無い分、相対比較が難しく、またマーケットサイズも正確に測れないため、 撤退ラインが論理的に決めづらい。

それでも「こだわり切る」べきかどうかは、非常に悩ましい。

正解は無いと思うし、 最後に勝った方が正義なのも理解している。

「こだわり」を一切捨て「成功確率」の高さを追求する戦い方に若干の羨ましさや 妬ましさを覚えつつ、それでも起業家として、ビジョンの達成手段における柔軟性は持ちつつも, ビジョンに「こだわり」続けることを選びたい。